2 トライアングル

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1985年4月1日 高校の入学式の数日前。 真新しい制服が出来上がったその日、私は嬉しくてすぐに着替えた。 新設されて三年目のその高校を受験したのは、制服が可愛かったから。 その一言に尽きた。 それまでの公立高校はどこも似たり寄ったりの紺色の上下の制服で、つまらない中学の制服とほとんど変わらない。 でもその新しい高校は、紺ブレザーの中のブラウスはボタンダウンで、グレイに赤が入ったチェックのネクタイと、お揃いの柄のスカートという当時としては斬新なデザインの制服で人気を集めていた。 家族に見せると「似合う、似合う」とあまりに褒めてくれるので、調子に乗ってもっと誰かに見せたくなってしまった。 真新しいローファーを履いて家を出ると、真っ直ぐ三軒隣の家へ向かった。 玄関でピンポンを鳴らすと、すぐにおばさんが出てきて 「かおちゃん、制服きたのね!まぁ可愛い!ちょっと大輔!大輔!」 と二階に向かって息子を呼んだ。 「なんだよ、友達来てるって言ってんじゃん」と言いながら下りてきた大輔が私を見てぎょっとした。 「おま、なんでもう制服着てんの?」 「友達ってだれ?」 質問には答えずに、靴を脱ぎながら聞いた。 「お前な、上がれって言われる前に上がるか普通」 「お邪魔しまーす!」 にこにこしているおばさんに声を掛けてさっさと上がると、大輔よりも先に階段を上がり勝手に部屋のドアを開けた。
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