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2020年4月1日 25年目の結婚記念日の一か月前。 この日が私たちの約束の日だった。 25年前と比べると街は大きく変わった。 駅周辺はもちろん、地下鉄が伸びて新駅が出来たり、埠頭の方も整備されて次々と新しいエリアが生まれて繋がって行く。 一日では歩ききれないほど大きくなった街。 灯りが燈りはじめた夕暮れの街を見下ろすレストランで、私たちはワイングラスを傾けた。 「乾杯」 チリンと鳴った薄いグラスに満たされた白ワインに口をつけた。 「早かったな…」 つぶやくように直樹が言った。 「そうだね。私たちがまさかの50歳だもんね」 「香織は全く変わってないけどね」 あの頃と変わらない瞳で私を見つめて甘い言葉をささやく。 「直樹も変わらないね。今でも私を甘やかしてくれる」 そう言いつつも嬉しさで顔がにやけてしまう私は、いつもより少し沈んでいる直樹の様子に全く気が付かなかった。
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