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「あ!そうだった。あの時ね」
「一目ぼれだった」
「え!うそ」
「そうなんだよ。だから俺の方が先だけど、大輔はもっとずっと前から香織のことを…」
「もうやめて。私は直樹を選んで25年間幸せだった。そしてこれからも。どんな時でもずっと直樹と一緒だよ」
「…そうだな。俺は香織と結婚して子供が出来て、一緒に育てて毎日笑って。本当に幸せだった」
しみじみとそう言うと、直樹は私の顔を覗き込むようにしながら言った。
「最高の人生だよ。香織、幸せな時間をありがとう」
直樹の長い両腕が私の肩にまわり、ぎゅっと抱きしめられた。
私も直樹の背中に腕を回して、私たちは小さな箱の中で一つになった。
その時ゴンドラがちょうどてっぺんに来たようだった。
360度視界を遮るものが何もなくなって、私たちは天空に浮かび上がった。
「香織、愛してる」
甘い甘い直樹の声。
思わず目を閉じた次の瞬間、唇が重なった。
その時、閉じた瞼の裏に無数の流星が降り注いだ。
「え?」と思っているうちに左の掌の中に、何かが滑り込んできた。
丸くて、固い…小さな金属。これは…
それ以上何も考えられないまま、私の瞼の裏を埋め尽くした流星の光がスパークして、何もかもがわからなくなった。
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