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とめどなく甘い言葉を吐き続ける直樹に、ほんの少し違和感を覚える。
どうしたんだろう。感覚がどこか日本人離れしているとは思っていたけど、ここまで甘いセリフを言い続けられるとさすがに心配になる。
「ワインで酔っぱらった?それとも甘いデザートのせい?」
大好きなティラミスをスプーンですくいながら聞くと、直樹は
「なんだろうね、テンションがぶっ壊れたみたいだ。香織の事が…」
そう言いながら、私の目をじっと見ている。
「なに?」
「いや、これ以上言ったら鼻血出そうだから止めておくよ」
笑ってスプーンを置いた。
コーヒーも飲み終わる頃になって、私は切り出した。
「ねぇ、ここで見せてくれないの?」
「何を?」
「指輪。今日のメインはそれでしょ?」
そうなのだ。
今日のデートは結婚指輪を取りに行くのが目的で、映画と食事はついでみたいなもの。
こんなにいいレストランを予約してくれたのは指輪を見せてくれるためだと思っていた。
なのに乾杯の時もデザートのタイミングでも出してくれない直樹にしびれを切らして、自分から催促してしまった。
何か月も悩みに悩んで決めた指輪を早く見たくて。
「後であれに乗ろう」
私の質問には答えずに、直樹は窓の外を指差した。
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