8 そして観覧車で

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ランドマークの地下に出来たおしゃれなカフェバーで、ワインを飲みながら軽く食事をした。3歳からの人生のほとんどを一緒に過ごした私たちなので、話題には事欠かない。 お互い年を取ったなぁと、最後はそこに行きつくのが常だった。 「直樹はどうせ『香織は全然変わってないよ』とか言ったんだろうな」 「なんでわかったの?」 「そりゃわかるよ。あいつは王子様だからさ。ちゃんと本気で言ってるから安心しろ」 「わかってる。さすがに私もくすぐったかったよ。だって自分が一番わかっていることだから」 「俺だって香織は今でも若くて綺麗だと思ってるよ」 「うわー、いいよ、大輔は無理しなくて」 「無理何てしてないけど。年を重ねた美しさってやつがあるだろう?アンティークとかさ」 「アンティークの定義は百年以上だからね。せめてビンテージぐらいにしておいてよ」 「ビンテージか。ちょっといい酒みたいだな」 「そうだね。いい具合に渋みが抜けたワインみたい」 それで十分だった。お互いに年を取って角も取れたと思えば何でも楽しい。
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