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大輔といるのに、目を閉じると直樹とこの観覧車に乗った日の事が蘇ってくる。
忘れられるはずがなかった。
私の初恋。
私は大輔の肩に頭を乗せて、直樹の事を思った。
大輔の手を握りながら、直樹の声を思い出していた。
「ねぇ、キスして」
耳元で囁くと、大輔は私の手を握っていない方の手のひらで私の頬を包み、優しく顔を寄せた。
「「香織、愛してる」」
そこでゴンドラがてっぺんへ登った。
中天に投げ出されたような浮遊感に、気が遠くなりそうになる。
私は右手をポケットに滑り込ませて、そこに入れてある二つのリングを握りしめた。
私が今、キスをしているのは、だれ?
閉じた瞼の裏に降り注ぐ流星。
白い尾を引いて重なり合う光がスパークして…
また別の世界へ私を連れて行こうとしている。
次の世界では…私はどうなっているのだろう。
直樹に会いたい。
大輔と生きたい。
自分では出せるはずのない答えを待ちながら、私は白い光に身をゆだねた。
~『いつか、観覧車で』~了
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