8 そして観覧車で

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大輔といるのに、目を閉じると直樹とこの観覧車に乗った日の事が蘇ってくる。 忘れられるはずがなかった。 私の初恋。 私は大輔の肩に頭を乗せて、直樹の事を思った。 大輔の手を握りながら、直樹の声を思い出していた。 「ねぇ、キスして」 耳元で囁くと、大輔は私の手を握っていない方の手のひらで私の頬を包み、優しく顔を寄せた。 「「香織、愛してる」」 そこでゴンドラがてっぺんへ登った。 中天に投げ出されたような浮遊感に、気が遠くなりそうになる。 私は右手をポケットに滑り込ませて、そこに入れてある二つのリングを握りしめた。 私が今、キスをしているのは、だれ? 閉じた瞼の裏に降り注ぐ流星。 白い尾を引いて重なり合う光がスパークして… また別の世界へ私を連れて行こうとしている。 次の世界では…私はどうなっているのだろう。 直樹に会いたい。 大輔と生きたい。 自分では出せるはずのない答えを待ちながら、私は白い光に身をゆだねた。 ~『いつか、観覧車で』~了
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