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「本番の時の感動が薄れたらどうしよう」
「ありえない。指輪の交換を何度やったとしても俺はそのたびに感動するよ」
「何度もするもんじゃないでしょ…あ」
言いかけた言葉の途中で、ぎゅうっと抱きしめられた。
「香織」
「ん?」
「俺を選んでくれてありがとう」
「…直樹」
「愛してる。俺の全てをかけて幸せにする」
私の頬を大きな掌で包み込むと唇を重ねた。
一瞬…閉じた瞼の裏が、白く光ったような気がした。
まるで輝きながら夜空に現れた流星が、一筋の奇蹟を残して消える瞬間のような白い光。
それはほんの一瞬の事で、すぐに跡形もなくなってしまった。
唇を離した直樹が「香織?」と心配そうに顔を覗き込んでいる。
私は小さく首を振ると、直樹に笑いかけた。
「私がおばあちゃんになっても、そんな甘い言葉を言ってくれる?」
「もちろん。その時は俺もおじいちゃんだけど、いい?」
「もちろん。一生こうしていようね」
私がそう言うと、直樹は一瞬だけ黙った後「そうしたいね」と言った。
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