1 コスモクロック21

7/8
前へ
/52ページ
次へ
「本番の時の感動が薄れたらどうしよう」 「ありえない。指輪の交換を何度やったとしても俺はそのたびに感動するよ」 「何度もするもんじゃないでしょ…あ」 言いかけた言葉の途中で、ぎゅうっと抱きしめられた。 「香織」 「ん?」 「俺を選んでくれてありがとう」 「…直樹」 「愛してる。俺の全てをかけて幸せにする」 私の頬を大きな掌で包み込むと唇を重ねた。 一瞬…閉じた瞼の裏が、白く光ったような気がした。 まるで輝きながら夜空に現れた流星が、一筋の奇蹟を残して消える瞬間のような白い光。 それはほんの一瞬の事で、すぐに跡形もなくなってしまった。 唇を離した直樹が「香織?」と心配そうに顔を覗き込んでいる。 私は小さく首を振ると、直樹に笑いかけた。 「私がおばあちゃんになっても、そんな甘い言葉を言ってくれる?」 「もちろん。その時は俺もおじいちゃんだけど、いい?」 「もちろん。一生こうしていようね」 私がそう言うと、直樹は一瞬だけ黙った後「そうしたいね」と言った。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加