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退去後の“原状回復”に立ち会った友人が妙なモノを見つけたと話してきた。
彼の仕事は不動産業。担当していた賃主が警察に捕まり、家族が賃貸の退去を申し出てきた。
家具や日用品は全て処分を終え、後は業者に入ってもらい、部屋の中のクリーニングや修繕費の見積もりを出してほしいとの事だった。
賃主と家族の間に、ほとんど交流はなく、面談した友人は彼らの顔から
“バカ息子の後始末を嫌々やっている”
という様子がハッキリみてとれたと言う。事実、この賃主は夜中に大声を出す、隣人との
いさかいもしょっちゅうあり、酒を飲んで自室の窓ガラスを割ってしまうなど
苦情の絶えない人物だった。
なので、専門の業者と部屋に入った時、片づけられた筈の室内の“荒れよう”を見て、
費用が高くつくことと、家族の渋面が増す事は容易に想像できたと言う。
「そう言えば、この部屋の奴が起こした事件、知ってるかぃ?」
友人より年上の業者が、壁につけられた“殴り痕”の大きさを計りながら、こちらに聞いた。首を振る彼に、業者は笑い、言葉を続ける。
「いきなり通行人に原付で突っ込んで、そのまま殴りかかったんだと…理由は“そいつが
俺を睨んだんだっ!!殺してやるって目で俺を見た“ってさ。
相手は70のばーさんだぞ?イカレてるよな…可哀そうに、死んじまったよ。」
賃主の苦情や職業柄から(偏見や誤解を招くといけないので、詳細は省くが…)
荒っぽく、やさぐれた様子の人物とは理解していた。
営業所に着た時の開口一番も、薄汚れた万札を何枚かだし、
「これで、部屋貸してくれよ?」
と、い・か・に・もな態度だった。正直、軽蔑はすれど同情の余地はないと思っていた。
そんな友人の沈黙と表情を“共感”と受け取った業者は、床に転々としているタバコの
燃えカス後の箇所を数えながら、喋りを再開していく。
「最近、いや、昔からか?専門的な事はわからねぇが…増えたよな?こーゆう話。
車のあおり運転とか、肩がぶつかっただけで、相手を殴り倒す。そんな感じの奴がよ。
まぁ“みんな、不満が溜まってんだよ”と言っちゃあ、それで、しまいだけどよ。」
それはわかると友人は思った。ささいな隣人トラブルや舌打ち、無視、暴言がキッカケとなり、暴力や殺傷沙汰になる報道を多く目にする。
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