黙って私についてこい。

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「…………お前…」  ナギサは。真っ赤になった顔でそっぽを向いて、そのまま告げた。 「お前がチョコレート好きではないことを知っていたからな。お前が一番喜ぶと思ったプレゼントを用意してやったぞ…感謝するがいい」 「ナギサ……」 「黙って私についてこい。……私と結婚しろ、ケータ!」  本当に――どうしてこんなにも、発想がぶっとんでいるのやら。  箱に入っていたのは、お菓子ではなく――婚約届け。しかも、既に彼女の方は記入済みときている。 ――……お前な。なんでこう、俺より先に動いちまうのかなぁ。  心のどこかで、不安だったのだ。  こんなにも、こんなにも――彼女のことが好きなのは、ひょっとしたら自分だけではないのか、と。  だけど。 ――確かにこれは……俺が一番喜ぶプレゼント、だ。 「……ばっかじゃん、お前」  恥ずかしいのと嬉しいのと愛しいので――いっぱいいっぱいになりながら、俺は。 「今の法律だと、俺十八歳にならねーと結婚できないんだってば」 「な、なに!?そうだったか!?」 「そうだよ、お前らしいなあ」  バカで一途、タキシードだって似合ってしまいそうな男前なのに――どんな女より魅力的な彼女に。精一杯の笑みでもって、答えたのだった。 「だからこれ、書くのはいいけど出すのは……俺らが高校卒業する時になってから、な?」  これから色々試練はあるかもしれないけれど、とりあえず。  俺は世界で一番幸せな男だ。それだけはもう、間違いない。
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