授かり地蔵

「本当よ。そこに行った女性は、必ず妊娠するって地元では昔から有名な場所なの。ただ、本当に子供が欲しい人だけのものだから、あまりオープンにはなってないの。だから口コミベースで伝わってて、知らない人も多いみたい」
「ふーん」
「場所も街中からは少し離れてるの。人が殺到すると困るから、分かりにくいところに置いてあるみたい。でも別に山の中にあるってわけでもないのよ。興味あるなら地図書いてあげる」
「あんたは行ってくれないの？」
「うーん、実はあたし、今ちょっと実家の方に顔出しにくい事情があってさ……悪いけど」
「ああ、なんとなく分かる……」
「まあ、どうせお金取られるわけじゃないし、失敗してもダメ元だと思えば気休めぐらいにはなるんじゃない？あたしの実家ったって、X県だからやろうと思えば十分日帰り出来るよ」
「ふーん……じゃ、行ってみようかな。で、なんてお参りすればいいの？」
「言葉はどうでもいいから、要は心みたいよ。お地蔵様に向って『私はどうしても赤ちゃんが産みたいのです。どうぞ私のお腹に赤ちゃんを授けて下さい』って心から願えばいいみたい」
「わかった。じゃ、地図くれる？」
　私はナプキンを何枚か使って、詳細な地図をその場で書いた。

　数日後、理沙から電話があった。
「行って来たよ。あんたが言った通り少し分かりにくかったけど、地図が良かったから、何とか迷わずに行けたわ」
「良かった。ちゃんとお参り出来た？」