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「うん。私の前に男が一人お参りしてたからちょっと待ったけどね。去り際にあたしのことジロジロ見てたけど、睨み返してやった。だいたい男が授かり地蔵に来るってのも変だよね」
「……ふーん」
「とにかく『私はどうしても赤ちゃんが産みたいのです。どうぞ私のお腹に赤ちゃんを授けて下さい』って何度も何度もお地蔵さんにお祈りした。そしたら何となくお腹の辺りに温かいものを感じたような気もしたの。気のせいかもしれないけどね」
「それでいいんだと思う。じゃあ、きっと上手くいくと思うよ。あとは信じることよ」
「わかった……」
「また、結果教えてね。あたしも教えた手前、気になるからさ。じゃ、頑張ってね」
電話を切りながら、私自身も彼女の妊娠を願っていた。
約三か月後、また理沙から電話があった。
「もしもし、加奈子?」
「理沙?その後どう?」
「今日検査結果が出たのよ。そしたらね……」
「うん……」
「何と双子だって!」
「へえー!」
「もう、バッチリよ!やっぱりあのお地蔵さん凄いわ。加奈子、本当いいこと教えてくれたわ。有難うね」
「そんな、お礼なんかいいのよ。とにかく良かったね」
とりあえず、あの時のお参りの効果があったらしい。それにしても、理沙が行ったとき、先に人がお参りしてたなんて、意外だった。
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