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授かり地蔵
今日、久しぶりに理沙とお茶した。メールやSNSのやり取りはあったが、実際に会うのは彼女の結婚式以来だからもう二年近くになる。
一流企業、しかもオーナー企業の御曹司との玉の輿婚というやつだが、二股三股は当たり前、といった彼女の以前の行状を知る人間は、心からおめでとうと言う気にはなれなかったと思う。結婚披露宴に招待された”事情を知る人達“(私もその一人だが)が、いかにも育ちの良さそうな新郎を気の毒そうに眺めている光景が妙に印象的だった。
久しぶりに会った理沙はいかにも御曹司の奥様らしく、上から下までブランド物で固めていた。何だか“完全武装”という言葉が浮かんできたくらいだ。値踏みするのも不愉快だからやめておいたが、立場上みすぼらしい恰好は許されないという事情も、分かるには分かる。
一方、その煌びやかないで立ちとは対照的に、表情の方が今一つ冴えない感じだ。一通り世間話が途切れた後に、水を向けてみた。
「あんた、ちょっと疲れてない?」
「やっぱ、そう見える?」
何だか元気が無いように見えたのだが、やはり何かあるらしい。
「子供がねえ……」
「なかなか出来ないの?」
理沙は、無言で憂鬱そうに頷いた。
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