第1章

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 僕は当時はまだ生まれたばかりで、大した記憶はない。  しかし、脳みそにかすかに残っている記憶はあのときの世間は、僕の心に妙なくさびを残していた。  腐っていた。  腐っていたのだ、あの頃は。  前置きで散々語ったが、あのときはパソコンの発達、そして世紀末が近いからか、バブルも崩壊して徐々におかしくなった人の精神が寄り集まったせいかオカルトブームも高まり、テクノロジーとオカルトが変な融合を果たしていた。  ようするに、だ。  僕は、それを再び見たかった。  高校の頃の友人から聞いた話だ。 「ほら、あの時代ってチャットが流行っていたろ」  彼は言った。  怖い話を聞くにしても、今回の前置きをほぼそのまんま彼に伝えていた。大変めんどくさい筆者であるが、そこは流石に長い付き合いなので了承してくれた。「お前って天の邪鬼というか。めんどくさいよな」「でなきゃ、小説なんて書かん」と生意気な返答をしたのはご愛敬。  彼が言うには、昔、チャットにはまっていたのだとか。  それも、僕と会うよりもっと前、中学一年とかでらしい。  確かに、その頃からパソコンはあった。ネット環境もあった。  といっても、ダイヤル回線だ。プープー、ピーピー、ゴーゴー、と今の若者が聞いたら眉間にしわを寄せる効果音を発してネットにつないでいた。モニターも薄い液晶ディスプレイではなくブラウン管。ブラウン管というのも、今じゃ死語らしいが、ともかく、そんな原始時代の話だ。  チャットルーム。  今でいうと、出会い系に近いのだろうか。いや、当時はようやくパソコンが普及しつつ……いや、あくまで一部の話で、大衆に一斉に広まったわけではないが、その始まりが見えてきた頃だ。  そのため、若者が多く出会いも若者と若者が話すというもので、十代同士が圧倒的に多かった。  ようするにあれだ、コンビニの前で若者がたむろするようなものだ。それを、わざわざ大きなブラウン管の機械を使ってやっていた。チャートルームというものが、ネットにはころころ転がっていた。ネット喫茶というか何というか。チャットするだけのホームページが至る所に転がっていたのだ。
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