第1章

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「首つり死体の画像だよ。普通の部屋でさ、そいつ首吊ってんだ。天井までは見えないから、どうやって吊ってるのかは不明だけど。死に顔といいさ、床に垂れてる体液などが鮮明に写っててどう見ても偽物じゃないって、モノホンなやつでさ」 「あぁ、そういやあの頃ってそういうの多かったよな。某巨大掲示板とか、そういうのの宝庫ってイメージで近づかなかった」 「それから、ほんとに、あいつが死んだのかなって。噂になった」 「いやいや、ほんとにそいつの死体なわけないじゃん。どっかから拾ってきたんだろ、画像を。何でそんな風に考え」 「その画像にはさ、パソコンも写ってたんだよ。俺らと、さっきまで会話してたチャットまで写ってた」 「え」 「さっきまで話してた会話がまんま載ってたんだ。それを見たらさ」 「いやいや、だから画像を編集してさ。フォトショとかで」 「俺はそれには詳しいわけじゃないがさ。それって、数秒でできることなのか?」 「は? どういうことだよ」 「ほんの数秒前の会話まで、その画像には張られてたんだ。ほら、チャットって文字のあとに日付や時間が載るだろ」『何々、何々 -12/25 am10:00』てな感じか。「それを見ると、どう考えても数秒間。三秒か四秒ぐらいの間しかないわけよ。それをさ、大勢が見て違和感ないくらいに合成することってできんのかな」 「い、いやそれは。でも」  その先を想像すると、僕は怖い連想に入る。  その死体は本物だとする。そう、友人の言ったチャットルームの会話も、写っていたのは本物だと。  だが、その先を考えると身がすくむ。幽霊なんて信じてない者からしたら、その先はわかる。 「言っておくけど、誰かが写真撮ったってわけでもないぞ。殺人鬼を想像してたろ?」 「え、だって」 「そもそもさ。あの時代に、そんな数秒間でカメラを撮って、パソコンに載せられるものなんかあったか?」 「――あ」  そう、あのときは違うのだ。今だったら、スマホがそれをささっと解決してしまう。だが昔は違う。デジタルカメラだって、そんなすぐにはできない。  この話は、友人から何気なく聞いたものだったが、僕の中で深くつきささり、今に至る。  このあと、運がよかったのか、怖い話にくわしい人と出会うことができ、相談することができた。
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