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「結果的に、美菜と夏目のことを疑うようなことをしてしまい、悪かった」
「爽さんも美菜さんも、本当に、ごめんなさい」
事の経緯を放し終えたふたりは仲良く頭を下げて、シュンと肩まで落として、見ているこっちが痛々しくなっちゃうくらい小さくなってしまっている。
悪気もなかったんだし、別に怒っているわけでもないんだし、『もういいから頭を上げてください』そう言って、ふたりに声をかけようとしたタイミングで。
「ったく、要の心配性にも困ったもんだよなぁ? 香澄ちゃんまで巻き込んで。なぁ? 美菜ちゃん」
ほとほとあきれ果てたって表情をした夏目さんに同意を求められてしまった私は、目の前でシュンとしてしまっているふたりに向けて、正直に想ったままの言葉を放つのだった。
「そうですね? 私も要さんの心配性は、異常だと思います。でも、それだけ要さんが私のことを想ってくれてるって証拠でもあるし、そういう要さんって、なんか可愛いし。私は、そういう心配性な要さんのことも好きです。だから、全然怒ってません」
そこへ、夏目さんの実に楽しそうな言葉が補足するようにして加えられて。
「だってさ? 要。もう、結婚してるんだし、ちょっとは自覚したらどうだ? 自分がこんなにも美菜ちゃんに愛されてるってこと。俺が見てきた限り、美菜ちゃんは要に初めて副社長室で逢った時から、要のことしか見えてないんだからさぁ。それに、きっと子供の頃に逢った時からそうだったんだろうから、間に誰も入れっこないんだからさぁ? 香澄ちゃんと俺みたいに。ねぇ? 香澄ちゃん」
「もう、ヤダ。爽さんったら、こんな時に恥ずかしいじゃないですかぁ」
「フンッ……なんだ、夏目、結局惚気たかっただけじゃないか」
「あっ、バレちゃった?」
最後には、ちゃっかり自分と香澄先生のことを引き合いに出してきた夏目さんのお陰で、シュンとしていた要さんも香澄先生ももうすっかり元気を取り戻していて。
四人でわいわい言い合っているうち、ごくごく自然に、夏目さんは香澄先生と、私は要さんと一緒に、ふたつのカップル仲良く、大広間へと戻ったのだった。
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