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「神宮寺要……副社長……ですよね?」
副社長の質問の意図が分からなくて、でも聞かれたからには、答えるしかなくて、そう答えれば。
抱きしめたままだった私のことをゆっくりと解放しながら、私の横に並んで脚を伸ばして座ると、
「あぁ、副社長は余計だが……。まぁ、いい、無理強いはしたくない。……いや、そうじゃなくて」
ブツブツとなにやら呟いた後、副社長が脚に布団を掛けると話し始めた。
「要っていう名前は、亡くなった父親が名づけてくれたモノらしい。
会社からも、誰からも、必要とされるような、大切な人になって欲しいって意味合いで付けたモノらしいが……。
俺には、この名前に込められた想いが大きすぎて、辛くなることがある。……ただ、一つでいいのに、それも叶わないなんてな。……あっ、いや……悪い。可笑しなことを言ってしまったな。なんでもない、忘れてくれ。今日は疲れてるようだ。先に休ませてもらう」
そう言って、私に背中を向けると、一人さっさと横になって布団をすっぽりと被ってしまった副社長。
いつもは、優しく包み込んでくれている筈のぬくもりがなくて、それだけでも寂しくて堪らないのに……。
副社長の背中を見ているとなんだか切なくて、私なんかに何もできないかもしれないけれど、せめて傍であっためてあげたいなんておこがましいことを思ってしまった。
そんな私は、
「いつものように傍で眠っちゃダメですか? じゃないと眠れません」
副社長の返事を待たずに、広い背中に寄り添って横になり抱きついてしまっていた。
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