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「……やっぱり、相当、無理してたんだね?」
ヒックヒックと泣きじゃくってしまってた私が、落ち着いてきた頃合いを見計らったタイミングで、優しい声を響かせた木村先輩。
その声に私が応える間もなく、木村先輩が、私の背中に大きな手を添わすと『よしよし』って感じで、そっと優しく宥めるように撫でてくれる感触がして。
毎朝、寝惚けたフリをする私に、副社長がしてくれるのと一緒のことの筈なのに……。
落ち着くどころか、副社長じゃないことにがっかりしてしまってる自分がいて、ただ虚しさが襲ってくるばかりで。
それどころか、昨夜の副社長の嬉しそうに微笑んでいた、あの麗しい綺麗な表情が浮かんできてしまって。
――副社長に無性に逢いたくなってしまった。
してもらってる相手が違っただけで、こうも感じ方が違うってことを思い知らされてしまって。
こんなにも、副社長のことを好きになってしまってるということに、改めて気づかされることになった。
「ごっ、ごめんなさいっ。つい泣いちゃって……。どうしよう。服、濡れちゃいましたね?」
やっと、我に返ることができた私が、慌てて木村先輩の腕から逃れようとしたら。
「ごめん。離したくない」
何故か、切なげにそう言って、まるで逃がさないとでもいうように……。
木村先輩に、さっきよりも強い力で抱きしめられ、動きを封じられてしまうのだった。
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