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屋上から出ていく木村先輩の背中を見ていると、なんだかやるせない釈然としない気持ちが込み上げてきた。
確かに、他部署である木村先輩は、目上でもある夏目さんに対して出過ぎたことを言ってしまったのかもしれない。
けれどそれは、もとはといえば、泣いてしまった私のことを心配してのことだった訳で。
夏目さんは、そんなことまでは知らなかったとはいえ、たまたま居合わせただけの木村先輩に対して、あんな言い方をしなくても良かったんじゃないだろうか……。
依然、立ち尽くして色々と考えを巡らしていた私は、いつの間にか、すぐそばまで来ていた夏目さんに、
「美菜ちゃん」と呼ばれて。
「なんですか?」
自分でも驚いてしまうほどの素っ気ない冷たい声を返してしまっていて。
私の声を聞いた夏目さんにも当然そう聞こえていたようで、
「……もしかして、怒ってる?」
ちょっと遠慮気味にやんわりとお伺いを立ててくるんだけど。
それがまた無性に腹立たしく感じてしまって……。
「そりゃ、怒りますよっ! 木村先輩は私のことを心配して、ちょっと出過ぎたこと言っちゃったかもしれないですけど……。そんなの、聞いてたら分かるじゃないですか。それなのに、あんな言い方しなくても良かったんじゃないですか?」
気付いた時には、夏目さんに怒りの矛先を向けてしまった後だった。
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