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行き過ぎた心配性のせいで聞く耳を持たない夏目さんに、益々、腹が立ってきた私は、
「急な異動でストレスが溜まってるだろうからって。心配して、気晴らしにカラオケに誘ってくれただけですから。そんな訳分かんないこと言わないでください。
別に先輩と一緒にカラオケくらい行ってもいいですよね?
あっ、そう言えば、チョコ貰いに行かなきゃいけないんでしたっけ? じゃあ、行ってきます」
早口に言いたいだけ捲し立てると。
「美菜ちゃん、分かったから落ち着いて。ね? 要が心配するから、あんまり遅くならないうちに――」
いつものように長ったらしくなりそうな夏目さんの言葉を阻止するように、
「――さっすが秘書の鑑。夏目さんは、いっつも副社長が一番ですもんね? いい加減、放してくださいっ!」
そうキツく言い放つと、相も変わらず、私の肩を掴んだままでいる夏目さんの手を振り払い、屋上を飛び出すようにして、一階にある店舗へと向かった。
私は、この時の夏目さんの忠告に耳を貸さなかったことを、後になって、後悔することになる。
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