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私は、夏目さんと気まずい雰囲気のまま、午後からの業務を熟していた。
四時になって、役員会議を終えて副社長室に戻って来た副社長に、チョコレートとコーヒーをお出しするために、私は副社長室に訪れている。
副社長は、部屋の中央に設置されている応接セットの上質な革張りのソファにゆったりと身体を沈め、嫌味なほど長い脚を組んでいて。
予定よりも長引いてしまった会議のせいで疲れているのか、目頭の辺りを手で押さえ、軽く揉むような所作を何度か繰り返している。
「コーヒーとチョコレートをお持ちしました。こちらのテーブルでよろしいですか?」
「……あぁ、頼む」
社長が不在のせいで、超がつくほどの多忙を極めている副社長。
秘書室に異動になるまで、そんなこと知らなかったし、露ほども感じたこともなかったけれど……。
どうやら、ずいぶん疲れが溜まってきているようだ。
疲れた様子の副社長の返事を待って、テーブルにカップの乗ったソーサーとチョコレートの箱を置いて。
副社長に少しでも早く疲れを癒して欲しくて、邪魔にならないように早々に立ち去ろうとしていた私は、
「ありがとう」
耳に心地いい落ち着いた声を低く響かせた副社長によって、簡単に抱き寄せられてしまった。
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