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「えっ!? ちょっ……副社長? 急になんですかっ?」
急な出来事に驚いて、副社長の顔の方へガバリと顔を上げて声を上げるも……。
「いいから、じっとしてろ」
「……で、でもっ。今、仕事中ですっ」
「俺に仕える秘書が、俺の命令に従うのも立派な仕事だ」
さっすが、傍若無人な副社長。
すました表情であたかも当然の如くもっともらしいことを言ってくると、私が手に持っていたトレーを取り上げつつ、私のことを簡単に黙らせてしまった。
おとなしくなってされるがままの私の身体を抱え直して、組んでた脚を伸ばすと、そこへ跨らせるようにして正面から抱きしめられてしまって。
「昨夜はあまり眠れていないのだろう?
それに、なんだか元気がないようだし、無理をしているようにも見える。何があったか聞くような無粋なことはしない。少し、休んでいくといい」
思いがけず、優しく気遣うような言葉を副社長にお見舞いさられてしまった。
昨夜、眠れなかったことに気づかれていたってことにも驚いちゃったけど、それは目の下にクマができてたりしたら分かるかもだけど。
――それでも、私のことを少しでも気にかけてくれてるってことが何より嬉しい。
それに、ソファに座ってはいるものの、毎朝してくれているように、肩に私の顎を乗っけて、大きな手では背中を『よしよし』ってするみたいにトントンってしてくれている。
そのお陰で、お昼の休憩時間に、木村先輩にもされて、副社長のことが恋しくなってしまった記憶が蘇ってきて。
気を抜いてしまうと、泣いてしまいそうで、副社長の背中にギュッと抱き着くことしかできない。
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