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いつものように社員専用の通用口を抜けて、ティーサロンの前を横切ると、綺麗に彩られたウィンドウディスプレイの傍に、木村先輩の姿があった。
「木村先輩、お待たせしました。遅くなっちゃってすみません」
「ううん。俺もついさっき来たとこだから、全然平気だよ。……それより、夏目さんずいぶん怒ってたみたいだけど、大丈夫だった?」
秘書室に異動になっちゃってからは、いつも夏目さんの運転する車で、副社長と一緒に帰っていたから、一緒に帰らない旨を副社長に伝えたりしていたせいで遅くなってしまったのだった。
そのことを聞いた副社長は、一瞬、怪訝そうな表情をしていたものの、友人との約束があることを伝えると、
「たまにはゆっくりしてくるといい」
そう言って、意外にも快く、あっさりと送り出してくれた。
なんとなく、木村先輩と一緒だということは副社長には言うことはできなかったけれど……。
私にとって木村先輩は、後輩思いの優しい先輩でしかないのだから、別に嘘を言っている訳じゃないと思ったからだ。
一方、そのことを知っている夏目さんはといえば、なにやら複雑そうな表情をしていたけれど。
まだ夏目さんのことを許すことができずにいた私は、それには気づかないフリをした。
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