それぞれの思惑~後編~

6/39
前へ
/703ページ
次へ
「はい。あれからすぐにチョコ貰いに行ったじゃないですか? それからは、普通でした。それより、私がすぐ動けなかったせいで、気を遣わせちゃって……。それなのに、嫌な思いさせちゃいましたね? 本当に、すみませんでした」 「ううん、俺は全然平気だから。夏目さんを余計に怒らしたの俺だしさぁ。そんなの気にしなくていいから。ほら、元気出してよ、ね?」 「……でも」 「あー、もう、そんな泣きそうな表情(かお)しなくていいからぁ。はいっ! もうこの話題はなしなしっ。じゃっ、気を取り直して行きますかぁ」 「はいっ!」 私のせいで、あんなに嫌な思いをさせてしまったというのに……。 後輩思いで、どこまでも優しい木村先輩は、逆に私のことを気遣ってくれたため、そんな木村先輩のご厚意を無下にもできず。 いつものように接してくれる木村先輩に感謝しつつ、それに倣って元気よく脚を進めたのだった。 *** オフィスを出てから五分ほど歩いたところに、木村先輩一押しの、ゆったりとしたオシャレな空間で、美味しい料理を堪能しながら、カラオケを楽しむことができるお店があった。 あらかじめ木村先輩がネットで予約してくれていたため、待たずにすんなりと個室に入ることができて。 現在、歌まで上手な木村先輩の歌声を聴きながら、美味しいデザートを味わっている。 充分にお腹も満たされて、今度は何を歌おうかなぁ……なんて呑気に考えてた私は、 歌い終わって正面のソファに座った木村先輩に、 「ねぇ、美菜ちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」 そう言って声を掛けられた。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14064人が本棚に入れています
本棚に追加