それぞれの思惑~後編~

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ついさっきまで、ノリのいい曲に合わせてあんなに楽しそうに歌っていた木村先輩が急に改まって、なにやら深刻そうな表情をしているように見える。 「なんですか? 聞きたいことって」 急に、どうしちゃったんだろうかと、キョトンとしつつ首を傾げて訊ねてみると。 「……うん。えぇっと、あのさぁ、美菜ちゃんってさぁ……。ご、ごめん、ちょっと待って」 木村先輩の方から言ってきた筈なのに。 どういう訳か、そんなに言い出しにくいことなのか、言いかけていたにもかかわらず、途中で中断してしまって。 何故か、私の視線から逃げるようにして、飲みかけのウーロン茶の入ったグラスを手に取り、そのまま一気に煽って、一滴も残さず飲み干してしまった木村先輩。 そして、空っぽになったグラスをダンッと勢いよくテーブルのコースターの上に戻したことにより、ガシャンッと残された氷がグラスの中で弾んで派手な音を響かせた。 その様を『おおー、豪快だなぁ』と見つめていると……。 「ふう」 と息を吐き出した木村先輩の声がようやっと聞こえてきた。
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