それぞれの思惑~後編~

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なんやかんや言いながらも、こうやって副社長の為に動いてしまってる自分に気付くたびに、そんな自分のことが不憫に思えてくるのだけれど……。 好きになってしまったのだからしょうがない。そう言い聞かせるしかないのだ。 そんなことをあれこれ考えていた私がふと正面の木村先輩へと視線を巡らせば。 恋愛には無縁に見えるモテない可哀想な後輩の恋愛事情が、そんなに珍しくて気になるのか、はたまた心配してくれているだけのか、どんどん前のめりになってきている木村先輩。 今は、何やら考え込んでいるようで、難しい表情を決めこんでいる。 きっと、浮いた話もない私のことが心配なのだろうが、いくら心配だからって、そんなに心配されてしまうと、なんだか余計いたたまれない気持ちになってくる。 それに、せっかくストレスを発散させに来ているというのに、なんだかどんどん居心地が悪くなっていくんですけど。 ――あー、早く、話題が変わってくれないかなぁ。 一人、脳内で毒づいていた私は、木村先輩の声でやっと現実に引き戻されたのだった。 「……好きな人ってもしかして、あの夏目さんだったりするの?」 一瞬、聞き間違ったかと思ってしまったくらいに驚いてしまった。 「えぇっ!? まさか。そんな訳ないですよ。あの夏目さんですよ? 絶対ないですからっ」 夏目さん、まだ許せないとはいえ、『あの夏目さん』呼ばわりしちゃって、ごめんなさい。 どうしてそういう風に考えが至ったのかは知らないけれど、木村先輩の誤解を解くべく速攻で返した私は、またまた驚くことになるのだった。 「じゃあさぁ、副社長とか?」
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