それぞれの思惑~後編~

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――いつも耳に心地いい低くて落ち着いた声も、今は聞きたくなんてなかった。 「どうして、こんなとこに居るんですか?」 だから、怒った口調でそう言っちゃったのに。 「……あぁ。コンビニ? 行ってた」 なーんて、無自覚なのかは知らないけど、そんな分かりやすい嘘を言ってくる。 だいたい夏目さんが何もかもしてくれてるのだから、副社長自らコンビニに出かける必要なんてないだろうし。 そんな姿、一緒に住むようになって、一度も見たことがない。 もしかしたら、コンビニなんて行ったこともないのかもしれない。 それに、なんで疑問形? ーーもう、突っ込みどころ満載なんですけど。 それなのに、副社長の声を聞いた途端、可愛いなんて思っちゃって。 もしかしたら、帰りが遅い私のことを心配して、迎えに来てくれたのかも。 なんて思っただけで、もう嬉しくて堪らないんだもん。 ――もしかしたら、私のことを少しでも好きになってくれてるんじゃないかって。 こうやって傍に居させてくれるだけでいいって思ってた筈なのに……。 いつのまにか、副社長への想いはどんどん膨らんでしまってて、こんなにも欲張りになってしまってたんだ。 そうか、だからきっと、副社長の元カノのことは、そんな欲張りな私への神様からの忠告なんだ。 ――これ以上、好きになるなっていう。 でも、もう、手遅れみたいです。
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