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――いつも耳に心地いい低くて落ち着いた声も、今は聞きたくなんてなかった。
「どうして、こんなとこに居るんですか?」
だから、怒った口調でそう言っちゃったのに。
「……あぁ。コンビニ? 行ってた」
なーんて、無自覚なのかは知らないけど、そんな分かりやすい嘘を言ってくる。
だいたい夏目さんが何もかもしてくれてるのだから、副社長自らコンビニに出かける必要なんてないだろうし。
そんな姿、一緒に住むようになって、一度も見たことがない。
もしかしたら、コンビニなんて行ったこともないのかもしれない。
それに、なんで疑問形?
ーーもう、突っ込みどころ満載なんですけど。
それなのに、副社長の声を聞いた途端、可愛いなんて思っちゃって。
もしかしたら、帰りが遅い私のことを心配して、迎えに来てくれたのかも。
なんて思っただけで、もう嬉しくて堪らないんだもん。
――もしかしたら、私のことを少しでも好きになってくれてるんじゃないかって。
こうやって傍に居させてくれるだけでいいって思ってた筈なのに……。
いつのまにか、副社長への想いはどんどん膨らんでしまってて、こんなにも欲張りになってしまってたんだ。
そうか、だからきっと、副社長の元カノのことは、そんな欲張りな私への神様からの忠告なんだ。
――これ以上、好きになるなっていう。
でも、もう、手遅れみたいです。
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