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暫くして、私が目を覚ましたのは、副社長の所持するマンションの寝室ではなくて、見知らぬ病院のベッドの上だった。
そして、その傍らには、昨夜からずっと付きっ切りで、付き添ってくれていたらしい副社長の姿があって。
さっき聞こえたもう一人の男性の声の主は、副社長の父方の従兄で。
ここ、光石総合病院の院長であり、内科医の 光石 譲さんだった。
さっすが副社長の従兄だけあって、副社長には敵わないけれど、均整のとれたとても綺麗なお顔をしてらっしゃる。
ちなみに、光石さん(三十四歳)の奥さんはここの副院長で、腕のいい有名な外科医らしく、光石さんより一つ歳上でしっかり者の姉さん女房のため、尻に敷かれているらしかった。
それよりも、驚いたことに、副社長の亡くなったお父さんの実家は、私が入院しているこの総合病院を経営していて。
代々お医者様の家系で育ったお父さんも、超名門大学の医学部を卒業した立派なお医者様だったらしいのだ。
けれど、副社長のお母さんである社長の麗子さんと出逢い、婚約してからは、二男ということもあり、この総合病院を手伝いながら経営の勉強もしていたらしい。
結婚後、『YAMATO』の経営にも携わるようになって、二人のご子息にも恵まれて幸せ絶頂って時に、出張先の海外で飛行機事故に遭ってしまったのだという。
副社長の代わりに、光石さんが色々詳しく話してくれていると……。
フンッと鼻で軽く笑いながら、
『そんな昔の、しかも周りの大人から聞かされただけの話し。よく覚えていられるな?』
呆れたように言う副社長の表情がなんだかとっても寂しそうに見えてしまった。
副社長が四歳の頃だったらしいから、お父さんが早くに亡くなって、きっと寂しい思いをしていたんだろうと思う。
でもきっと、誰にも弱音なんて吐かずに、ずっと我慢してきたんじゃないだろうか。
可愛がってもらった、周り大人たちの期待に添えるように、会社の要になるために……。
そんなことを想像しただけで、なんだかこっちまで切ない気持ちになってしまった。
そしたら、そんな色んなことを話してもらえるような、副社長にとっての要(大切な人)に、いつかなれたらなぁ……。
なんておこがましいことをまた思ってしまう自分が居て。
そんな自分に気づくたびに、どうしようもない虚しさが襲ってきて、苦しくて堪らなくなるだけなのに。
それに加えて、見たこともない副社長の元カノの影が、頭の片隅に、どうしてもチラついてきてしまうから余計だ。
まぁ、それはさておき、二人の話によれば……。
昨夜、雨に濡れてびしょ濡れ状態だった私は、案の定風邪を引いてしまったようで、高熱を出してしまい、一晩中うなされていたらしい。
それでも、まさか、風邪くらいのことで人生初の入院をすることになってしまうとは、思いもしなかったけれど。
そして、ここに夏目さんが居ないのは、入院してしまった私の着替えやらなんやかんやの、買い物に行ってくれているからだという。
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