それぞれの思惑~後編~

16/39
前へ
/703ページ
次へ
麗しの副社長と比較すると、見かけは少しワイルド系だけれど、病気の患者さんに接してるせいか、とても気さくで親しみやすく、例えるならチョイ悪風な雰囲気を持つ光石さん。 さっき検温に来てくれた若い看護師さんが、指示を出す光石さんへと向ける視線がとっても熱いものだったことからも、かなりおモテになるのだろうことが窺えた。 光石さんの行い次第では、大事なアレが、副社長のお言葉通りになってしまわなければいいのだけれど。 なーんて、余計な心配をしてしまったのは内緒にしておくとして……。 そんな光石さんは、簡単な診察を済ませると、 「まだ発熱は続くかもしれないけど、思った通り風邪症候群のようだから。今は熱も下がってきているようだし、心配はないと思うよ。念のため、要の言うように、精密検査のオーダーは出しておくけど、本当に心配はないから。眠れるようならゆっくり休んでおくようにね?」 見かけによらず、お医者様らしいことを言った後。 『精密検査』と聞いて、ちょっとびびり気味に返事を返した私のことを、何やら意味ありげに見やってから、その様子を静かに見守っている副社長の方へとゆっくり近づいていく光石さん。 「まぁ、でも、若いからってあんまり無茶させて、秘書だっていうこの子にパワハラで訴えられないようにしろよ? 要副社長さんっ!」 やっぱり、なにやら怪しい微笑を浮かべて、副社長の肩にポンッと手を置いた光石さん。 ついさっきまでは、『要』って呼び捨てにしていたというのに……。 ワザとらしく『副社長さん』なんて役職に『さん』まで付けちゃってるし。 語尾には、ハートマークまで見えちゃいそうな言い方だ。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14065人が本棚に入れています
本棚に追加