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やっぱりまだ熱があるせいか、私がボーッとしながら二人の様子を静かに窺っていると。
副社長があからさまに不愉快極まりないっていうような表現を浮かべ、自分の肩に置かれた光石さんの手の方へ視線をゆっくりと巡らせて。
ただでさえ、涼しげでクールな切れ長の瞳を、よりいっそう忌々しげに細めたかと思うと。
まるでそこからブリザードでも放っているかの如く、冷たい視線で睨み付けているように見える。
正面から、そんな冷たい鋭い視線で見据えられたら、さぞかし恐ろしいことだろう。
そう思い、ボーッと視線を光石さんへと向けてみるも。
慣れているのか、さっきと同じような表現を浮かべているように見える。
一方、副社長は、シッシッとまるで埃でも払うかのような手つきで、光石さんの手をさっさと払いのけると。
小バカにするようにフンッと大袈裟に鼻で笑ってから、
「お前なんかと一緒にしないでもらいたい。結婚まで考えてるというのに、セクハラなんかで訴えられるような、そんなことはしない。診察が終わったのなら、さっさと美菜の検査のオーダーでも出しに行け」
至極、当たり前のように、私たちの事情なんて知らないんだろう光石さんに対して、きっぱりと言い切ってしまった副社長。
――イヤイヤイヤ、副社長。そう言い切っておられますが、結構なセクハラやパワハラをお見舞いされゃってたと思うのですが……。
まぁ、別に、されてたからって、訴える気なんて、毛ほどもございませんけれども。
「はぁっ!? マジかっ!?」
直後、大そう驚いた光石さんの、医者らしからぬ大きな声が、ひっろい病院内にコダマしたことは説明するまでもないだろう。
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