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病院中に響き渡ったんじゃないかと思うほど、大きな声を轟かせた張本人である光石さん。
さっき、私に可笑しな視線を向けているようなそんな気はしていたのだが……。
どうやらそれは私の思い過ごしではなかったようだ。
その証拠に、なにやら可笑しな思い違いをしていたらしい光石さんが、
「あー、そういえばこの前、虎太郎(前会長、要の祖父)さんが診察の時に、『要がやっと身を固めてくれそうだ』とは言ってたけど。へぇ……でも、まさかこんな若い子だとは思わなかったから、驚いたなぁ……。俺はてっきり愛人候補かと思って、あんまりハードなセック――」
なにやら不適切な発言を繰り広げようとしていたのだが……。
それをいち早く察知した副社長によって、白衣を纏った襟元から覗いているコジャレたネクタイを躊躇なく思いっきり引っ掴まれ。
そのまま息の根を止められそうな状態になったため、それは敵わなかったのだった。
直後、そんな可哀想な光石さんは、ゲホゲホと苦しそうに咽ながらも、
「おっ、お前、俺を殺す気かっ!?」
なんとか副社長に訴えてみるも……。
既に、ベッド傍の椅子で腕と脚を組み直した副社長は、ツーンとすました表情を浮かべていて。
「フンッ。医者の分際で、病人である美菜の前で、下品極まりないことを口にしようとするからだ。本当に息の根を止めなかっただけ感謝してもらいたいくらいだ」
なーんて、やっぱり当然のことのように、一刀両断にスッパーンと言い切ってしまわれた。
……どうやら副社長は、私に自分がしてきたことや言ってきたことに関しては、棚に上げてしまわれているらしい。
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