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次に私が目覚めた頃には、もう窓の外は暗くなっていて。
いつから降り始めていたのか、強い風で煽られた雨粒が窓ガラスに勢いよく打ち付けられていた。
酷かった頭痛も、さっき目覚めた時よりは随分とマシになったような気がする。
でも、まだ熱があるのか、身体は相変わらず鉛みたいに重いままだ。
ベッドで横になったままでボーッと静かすぎる病室を見渡していると、もう居ないだろうと思っていた副社長の私の名前を呼ぶ優しい声が聞こえてきた。
「美菜」
どうやら、副社長は、窓とは反対側のソファで仮眠をとっていたようだ。
ずっと眠っていたとはいえ、初めての入院で、きっと心細かったんだろうと思う。
だから、無意識に、熱のせいでボーっとしながらも、点滴のなされていない方の手を副社長のいる方へと伸ばしてしまっていて。
それに気付いた副社長が、ベッドの上の私のことを覗き込むようにして、
「美菜、どうした?」
優しく声をかけながら、身を屈めてきたことに、何よりひとりぼっちじゃないことにホッとしてしまったんだろうと思う。
「いつもの『よしよし』してくだしゃい」
だから、ホッとしてしまった私は、泣いてしまってて。
そんな私の声は、まるで舌足らずな子供がお母さんにでも甘えているような声だった。
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