それぞれの思惑~後編~

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それでも、副社長は、病人が相手だからか、少しも嫌な素振りなんて見せないで、 「ひとりぼっちにされたと思ったのか?」 何でもお見通しだとでもいうように、優しく微笑んで、そう言ってくる。 それに観念して、素直にコクンと頷く私の涙をそうっと優しく指で拭ってくれて。 今度は、そんな小さな子供みたいな私のことをそっと優しく抱きかかえると。 「美菜は熱を出すと赤ちゃん返りするんだな?」 なにやら楽しげな声でそう言ってくると、いつものように大きな手で、私の背中を優しくトントンしてくれている。 本当は、副社長が私が言った通りにちゃんとやってくれることが嬉しいクセに……。 それでも、副社長に『赤ちゃん』扱いされたことが(かん)に障った私が、泣くのも忘れて、 「赤ちゃんじゃないもん」とむくれて言えば、 「そんなにムキになって怒ると、また熱が上がるぞ?」 それでも、トントンってする手はそのままで、やっぱり楽しげにからかうように言ってくる。 「だってぇ、赤ちゃんじゃないんだもん!」 だから、むくれた私が、ますますムキになって言えば、 「あぁ……そうだな? どんな可愛い赤ちゃんでも美菜には敵わない。素直にこうやって甘えてくる美菜が可愛すぎて……。美菜には悪いが、熱なんて下がらなければいいのにって思ってるくらいだ」 なーんてことを相変わらず楽しげに言われてしまい、あえなく撃沈させられた。
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