それぞれの思惑~後編~

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副社長の話によれば……。 驚いたことに、ここ最近、超が付くほどの多忙を極めていた副社長が過労で倒れたことになっていて。 私はというと、入院中の副社長に付き添って、雑務や会社に居る夏目さんとの中継役を担っていることになっているらしかった。 夏目さんはというと、昼間は会社でスケジュール調整やらの諸々を滞りなく(こな)していたのだという。 そして、夜になった現在はというと。 私が呑気に眠っていた間に着替えやなんやかんやを届けてくれた後、とっくにマンションに戻っているらしかった。 そういえば、以前、妹である美優さんを病気で亡くしていると言っていたから、もしかしたらあまり病院には居たくないのかもしれない。 副社長にも、 「美菜のお陰で、久しぶりにゆっくりできる。だから気に病むことはない」 そう言ってもらえて。 ようやく、納得することができた私は、意外にも心配性の副社長に促されるままにベッドで横になっている。 ……のだけれど、どういう訳なのか、眠ることができなくて。 きっと、何時間も眠り続けていたからだろうと思う。 そういう訳で、すっかり目が冴えてしまった私は、添い寝をしてくれている途中で、先に眠ってしまった麗しの副社長の綺麗な寝顔をこっそり堪能しているのだった。 時刻はもう、真夜中の二時を過ぎようとしていて。 時折、遠くで物音がするけれど、それ以外は、静かすぎるくらいにひっそりとした静けさに包まれている。 きっと、私一人だけだったら心細くて、とてもじゃないけど、耐えられなかっただろうと思う。 迷惑を掛けてしまって、申し訳ないという気持ちと、こんなに良くしてもらえて嬉しい気持ちとが()い交ぜになって溢れてきちゃって。 副社長や夏目さんの優しさが心にジーンと染みてくるから、気を抜いちゃったら、涙まで溢れてしまいそうだ。 でも、そんなおめでたい私の思考に、まるで待ったをかけるようにして。 麗しい副社長の口から、ポロリと零れ落ちた、 「……み…ゆ」 という、なんとも切なげに呼ぶ声が耳に流れ込んでくるのだった。
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