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一度溢れ出してしまった涙は止まることを知らないかのように流れ続ける。
いつの間にか止んでた筈の雨がまた降り始めたようで。
シーンと静まり返っていた病室には、土砂降りの雨が強い風で煽られて、窓に激しく吹き付けられる音が響き始めた。
まるで、たった今、残酷すぎる真実を突きつけられ、打ちのめされて、ただ泣くことしかできない私の心を表しているかのような土砂降りの雨。
――この雨が洗い流して、何もかも全部、なかったことにしてくれればいいのに……。
そんなこと思ったところで、どうにもならないんだってことくらい百も承知だ。
けれど、そう思わずにはいられなかった。
さっきの寝言なんて、まるでなかったかのように、気持ちよさそうに穏やかな寝息を繰り返している麗しい副社長のあったかい腕の中で。
私は、泣きながら眠れない夜を過ごすこととなってしまった。
そのせいで、折角下がりかけていた熱がぶり返してしまった私は、まるまる二日間の間、高熱にうなされることになってしまったのだった。
その間もずっと、副社長は片時も離れることなく付き添ってくれていたようだった。
そういえば、夏目さんが言ってたっけ、私と一緒だと美優さんのことを思い出しちゃうみたいなこと。
もしかしたら、病気で入院していたのだろう美優さんと私のことがダブってしまってるのかもしれない。
折角、美優さんの身代わりを見つけたのに、また失ってしまうことになるんじゃないかと、不安なのかもしれない。
――そう思うと、胸が締め付けられるようで、切なくて、苦しくて、堪らない気持ちになる。
でも、一番厄介なのは、美優さんの身代わりでもいいから、副社長の傍に居たいなんてことを思ってしまっている私自身だ。
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