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「うん。もう、大丈夫そうだね?」
「はい。光石先生、どうもお世話になりました」
「美菜ちゃん、そんな他人行儀な言い方しなくていいよ。もうすぐ親戚になるんだし。分からないこととかあったら、遠慮しないでいつでも言ってくれていいから。お兄さん優しいから、手取り足取りな~んでも教えてあげる。譲くんって呼んでくれればいいからね? じゃあ、さっそく呼んでみようか?」
「……」
「譲くん。ちょっと大事な話があるから、可愛い奥さんの小百合さんを大至急呼んで貰ってもいいかな?」
「あれっ? 要。お前まだ居たのか?」
「あ!? 俺がここに居ちゃマズイような言い方だな?」
「ハハハッ。そんなことある訳ないだろう?」
「じゃあ、なんで棒読みなんだ?」
「要くんの気のせいじゃないのかなぁ? ねぇ? 美菜ちゃん?」
「……」
「譲、その呼び方今すぐやめろっ!」
「あっ、はいっ! やめるっ。やめるから、そのメスは返してください。お願いしますっ。要坊ちゃ~ん」
「今すぐホルマリンに漬けてやる。覚悟しろ」
「ヒャー!」
入院から四日目、主治医である光石譲さんからようやく退院の許可をもらって、最後の診察を終えようとしていたのだが……。
本当に仲のよろしい副社長と譲さんのお二人は、さっきからなにやらじゃれあっておられるようです。
愉快な譲さんと話している時の副社長は、いつもより砕けた感じで、生き生きとしていて、なんだかとっても楽しそうにしている。
それに、副社長の素の姿を見ることができて、私的にはなんだかちょっぴり得した気分だ。
美優さんのことを知ってしまった時は、一体どうなることかと不安だったけれど……。
この調子なら、なんとか今まで通りで居られそうだ。
私は、騒がしい二人のやり取りを見守りながら、ホッと胸を撫で下ろしていた。
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