私、捕まっちゃいました

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逃げ場をなくした私が、ゴクリと唾を飲み込んだと同時、 「……面白い。 じゃぁ、この俺が、その気にさせてやる。覚悟するんだな」 よく通る低い声色で、そう言い放った副社長は、追い詰めた私を見下ろすようにして見据えながら、また、ジリジリと私との距離を詰めてくる。 もう、逃げる事なんてできない、そう諦めて目を閉じたその瞬間。 まるで、この瞬間(とき)を狙っていたかのように、副社長の熱い唇によって、私の震える唇は、噛みつくように奪われてしまった。 言い放った言葉も、口調だって、強引だし、キスだって乱暴な筈なのに……。 ギュッと噛み締めた私の唇を、まるで優しく(ほぐ)すようにして、 繰り返される蕩けるような甘いキスに、私の思考も身体も、その全てを溶かされて、 もう、なんにも考えられなくなってゆく……。 こうして私は、不本意ながら、傍若無人なこの副社長によって、捕らわれることになってしまったのだった。
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