深まる疑惑

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私は、前のめりになって首を傾げて待ってくれている夏目さんに、首を左右に振ってから、 『あぁ、やっぱり』という表情で私の言葉を待ってくれている夏目さんに、 「……さっき、要さんから、女の人の香水の香りがして、気になっちゃって。今日の会食に、……女性が……居たのかな、って……思って」 恐る恐る言葉を紡ぎ出した。 「なんだよ、そういうことかぁ。ビックリしたぁ。俺はまた、『おばあちゃんが亡くなって寂しいから、おばあちゃんのところに行きたい』とか言われたらどうしようって。あぁ、ビックリしたぁ」 「……そこまで子供じゃありませんっ!」 どうやら"見当違い"をしていたらしい夏目さんが、フッと可笑しそうに吹き出して、気が抜けたような口調で言ってきた言葉に、なんだか子供扱いされた気がして……。 速攻でムッとして言い返した私に、 「いや、別に子供扱いした訳じゃないんだ。亡くなった妹が中学に上がってすぐ、父親を病気で亡くしたんだけど……。 そん時、酷く落ち込んで、今の美菜ちゃんみたいに遺影の前から離れなくってさ。心配で、目が離せなかった時のこと色々思い出して、けど全然違ってたから拍子抜けしちゃってさぁ……。笑ったりして、ごめん」 「……いえ、こっちこそ。夏目さんが心配してくれてるのに、勘違いして怒っちゃって、すみませんでした」 すかさず謝ってくれた夏目さんに、私も謝り返すことになった。
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