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昨日は、要さんの元カノである静香さんのことで、ことあるごとに疑心暗鬼になって、不安になって落ち込んだりしたものの。
要さんから香る香水や少し機嫌の悪かったこと以外では、特にいつもと変わらない様子の要さんと、話を聞いてくれた夏目さんのお陰で、気にならないと言えば嘘になるけど、私の不安も少しずつ薄れつつあった。
そんな翌日の朝のことだった。
いつものように身支度を終えた私が、要さんや夏目さんと一緒に向かった駐車場で、夏目さんの運転する車の後部座席へと乗り込んですぐ。
これまたいつものように、私が座席に腰を下ろした瞬間、お尻の辺りに何やら小さな硬いモノの感触がして、
「……!? あれ? なんだろ?」
「ん……? どうかしたか?」
お尻を少しだけ横にずらして硬いモノを手に取ってみると。
それは小さなダイアモンドらしき宝石の粒が何個か連なって、揺れるたびに上品に輝きを放つフックピアスで、
「……これって、ピアス……ですよね?」
――もしかして、これって、静香さんのモノ?
てことは、この車に静香さんが要さんと一緒に乗ってたってことなのかな?
せっかく薄れかけていた不安がむくむくと膨らんで、様々な憶測が次から次に、頭の中を駆け巡っていく。
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