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だって、もしここで、静香さんの名前を出して、その全てが私の予想通りだったとしたら、きっと私は、もう立ち直ることなんてできないだろう……。
もう要さんなしじゃ居られないくらい、こんなにも、要さんのことを好きになっちゃってるんだから。
たとえ要さんと静香さんの間に何かがあったのだとしても、今はこうやって、私のことをなにより大事にしてくれている。
――要さんが傍においてくれるんだったら、それだけでいいから、傍に居させてほしい。
そんなことを考えているうち、要さんとのこれまでのことが、次々に浮かんできて……
私の帰りが遅かったときも、わざわざ迎えに来てくれた。
熱を出して倒れて入院した時も、仕事なんかほっぽりだして、片時も離れずに傍でついててくれた。
想いが通じあい、肌を重ねあって、想いを確かめあったときにも、終始初めてだった私のペースにあわせて、ずっと優しく気遣ってくれた。
美優さんのことだって、ちゃんと話してくれて、泣きながらプロポーズまでしてくれた。
おばあちゃんが倒れて病院に駆けつけたときも、亡くなったときも、泣いちゃったときにも、ずっと傍についててくれた。
――それが全部嘘だったなんて、そんなことあるはずない。
要さんが私に嘘をついていたことだって、きっと何らかの理由があるはずだ。
昨夜から、静香さんのことで、ずっと疑心暗鬼に陥っていた私は、不安ばかりが先行して、そんなことにも気づけなかった。
――要さん、いくら不安だったからって、要さんの気持ちまで疑ったりしてごめんなさい。
そんな想いを込めながら……。
要さんのお陰で、ようやくそう思えた私は、要さんの腕の中で、要さんの暖かな胸にぎゅうっとしがみついた。
「はい。心配させちゃってごめんなさい。これからは気を付けますから、安心してください」
「あぁ、分かった」
「要さん」
「……ん?」
「私、こんなに要さんに大事にしてもらえて、幸せです」
「はっ!? これぐらいのことで幸せなんて言われても困るし、嬉しくもない。
これからはもっともっと大事にして、もっともっと甘やかして、これでもかってくらいに幸せにしてやるから覚悟しろ。分かったか?」
「はい。楽しみにしてます」
「いい心がけだ」
しばらくの間離れがたくて……
抱きしめあっていた私と要さんは、ソファに移動してからも、要さんの腕の中で、時間の許す限りくっついたままでいた。
昨夜からずっと、あんなに不安で不安で堪らなかった筈なのに……。
それからは、要さんのお母さんとの初めてのご対面に向けて、気持ちを切り替えることもでき。
緊張感の所為か、あっという間に、当日である土曜日の朝を迎えることになった。
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