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漆黒の髪同様、キリリとした漆黒の眉に切れ長の双眸が印象的な、麗しくも男らしさのある要さんとは違って、隼さんは母親の麗子さんに似ているようだ。
ダークブラウンの少しウェーブのかかった髪は軽やかにセットされ、同系色のやや細めのしなやかな眉に、クリッとした円らなワンコを思わせるような双眸が印象的で。
要さんより背丈も少し低くて、身体の線も細く、例えるならアイドルのような中性的魅力のある美青年っていう言葉がしっくりとくる。
もしかりに、何か辛辣な言葉を浴びせられてしまったとしても、アイドル並みの甘いマスクとワンコのようなその瞳で、ニッコリと微笑まれてしまえば、全てが帳消しにされてしまいそうだ。
少々失礼かもしれないけれど、私の隼さんへの印象は、『あざといところがある』と言ってた要さんの言葉にぴったりだった。
それにしても、同じ兄弟でも、こうもタイプが違うもんなんだぁ……。
要さんのお父さんも、さぞかし素敵な男性だったんだろうなぁ……。
要さんといい、麗子さんといい、隼さんといい、神様は本当に不公平だ。
初めてお目にかかった弟である隼さんの容姿に感心して、三人と自分との落差に落ち込んでいるところへ、突如姿を現した静香さん。
たちまち嫌な音をたて始めた鼓動をそのままに、私は雅さんと麗子さんの間に挟まれたままで身動ぎできずに、ただただボーッと見つめることしかできないでいた。
そんな私の周りでは、隼さん、麗子さん、雅さん、虎太郎さん、そして静香さんらによって、次のような会話が繰り広げられていて……。
「さっき店舗に顔出したら西園寺社長と静香さんにお会いして、本家に立ち寄る旨をお伝えした際。久しぶりの帰国ということで、雅さんや虎太郎さんにも挨拶したいとのことでしたので、お連れしちゃいましたけど……。今日ってなんの集まりでしたっけ?」
「……あら、この前伝えてなかったかしら? 今日は要が婚約者を紹介してくれるからって……」
「いえいえ……僕は何も。ただ”帰って来るように”ってことしか聞いてませんけど……」
「まぁ、嫌だわ。麗子ったら」
「あら、だってぇ、お母さんが言ってくれてるとばかり思ってたんだもの~」
隼さんの話によれば、どうやら、今日のことが隼さんにうまく伝わっていなかったようだ。
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