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「……ん? あぁ、うん。でも、高梨も色々あったみたいだな? 年末に母親亡くしたらしいし。最近、家でもなんかあったっぽいしなぁ」
「――ええっ!? そうなんですか?」
「うん。まぁ、詳しくは知らないけどなぁ」
「……そうですかぁ」
「そんな浮かない顔しなくても平気だって? 美菜ちゃんと関わった人間は、皆幸せになってるんだからさぁ。高梨もきっと幸せになると思う」
「……え? どういう意味ですか?」
色々話しているうちに、何の根拠があるのか、急に突拍子もないことを言ってきた夏目さんに、首を傾げることしかできないでいる私の頭の上には、たくさんの?が飛び交っている。
そこへ、なにやらしたり顔をした夏目さんが私の質問に対しての説明を始めて。
「だって、要だろ? 俺だろ? 香澄ちゃんに、西園寺の我儘娘に、木村に。皆美菜ちゃんに関わってるじゃん。皆、幸せになってるだろう? まぁ、俺が一番幸せになっちゃったけどさぁ?」
「……なんだ。結局は、惚気たかっただけじゃないですかぁ? 呆れたぁ」
結構真剣に耳を傾けていたというのに、終いには、ただの惚気だったという夏目さんのオチに、ぶうたれた私が文句を言った直後。
私たちの頭上に広がっている晴れやかな青空と同じような晴れやかな表情をして、再び話し始めた夏目さん。
「まぁ、確かに、惚気たかったってのもあるんだけどさぁ。俺が言いたかったのは、色んなもんに、染まらずに真っ白なままの美菜ちゃんのことを好きになった男の、女を見る目は確かだから、ちゃんと素敵な相手を見つけることができるって言いたかったんだよ? まぁ、それもさ、今は香澄ちゃん一筋だから言えるんだけどなぁ」
夏目さんの言葉を最後まで聞き終えた私は、驚きを隠せずに、言葉を失ったまま、相変わらず晴れやかな表情で話し終えた夏目さんが青空を見上げた横顔を大きく見開いた目で見つめることしかできないでいた。
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