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青空を見上げたままの夏目さんの横顔を見つめたまま黙り込んでしまった私の方に、ゆっくりと向き直ってきた夏目さんが、ふっと柔らかな笑みを零すと同時に、
「美菜ちゃんのその反応、思ってた通りのもんだった」
あの頃よくそうしてくれていたように、私の頭に大きな手をポンッと乗せてきて、二、三度、ポンポンと弾ませながら、懐かしそうに眼を眇めて茶化してくると、
「……」
どう返したらいいか分からず夏目さんのことを見たままでいる私の頭に手を乗せたまま、夏目さんは私のことを満足そうに見やってから、また青い空に視線だけ向けて、照れ臭いのか、独り言ちるように話し始めた。
「今言ったことだけど、正確にはさぁ、俺のは、男としての『好き』とはちょっと違ったものだったかもしれない。美菜ちゃんと話してると毒気が抜けるっていうか、肩の力が抜けて、素の自分で居られるっていうか。美優と一緒に過ごした子供の頃の自分に戻れた気がしてさぁ。知らないうちに美菜ちゃんに美優の面影を重ねてたんだと思う。俺、美優が居なくなってから、美優のこと幸せにしてやれなかった自分を責めるばっかりで、そうやって色々誤魔化してきたけど。ずっと寂しかったんだと思う。
でも、誰かを好きになるのは怖くてさ、妹のような存在が欲しかったんだろうなぁ? だから、美菜ちゃんに美優を重ねて、その寂しさを埋めようとしてたんだと思うんだ。だから、恋愛感情だけじゃなかったんだと思う。でも、そのお陰で、美優以外の誰かを好きになれた自分に気が付けて。前に進みたいって思えたお陰で、今は香澄ちゃんっていう、俺にとって、”この人しか居ない”っていう大事な相手に出逢うことができたんだって思ってる。そういう意味でも、美菜ちゃんには本当に感謝してる。今は、純粋に兄として見守っていきたいって思ってるから、安心してほしい」
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