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そんな私のことにもまるで気づかない様子で。
相変わらず思案顔の夏目さんから、
「女子ってさ? やっぱ、そういうシチュに弱かったりすんの?」
またまた思いがけない言葉を振られてしまい。
私が一体何のことを指して言っているんだろうと、首を傾げた刹那。
「美菜がさっき、隼が王子様みたいだって言ってただろう? 夏目は、そういうことをされて、女性が喜ぶかってことを訊きたいらしい」
意外にも、ソファで隣り合って座っている要さんが分かり易く注釈してくれて。
不思議に思いつつも、訊かれたことに素直に答えたところ。
「そりゃ、好きな人にそういうことされて、喜ばない女性なんていないんじゃないですか?」
「……やっぱ、そうかぁ。でも、美菜ちゃんはまだ二十三で若いしなぁ。香澄ちゃんくらいの年齢だと、引かれちゃったりしないかなぁ?」
どうやら、夏目さんは香澄先生になにかサプライズ的なことをしようとしていることが窺えて。
ーー誕生日かなにかあるのかなぁ?
そう思った私が、
「もしかして誕生日ですか? それなら、別に年齢なんて関係なく嬉しいと思いますけど」
夏目さんに訊き返したところ。
「……ん? あぁ、違う違う。誕生日っていうか、まぁ、一生に一度のことっていうか、まぁ、ちょっとね」
なにやら濁すような言い方で、ハッキリとは言わないものの、明らかに、プロポーズを仄めかす夏目さん。
もしや、そう思った私が、隣の要さんに、口パクで尋ねると。肯定するように、ニッコリとした笑顔が返ってきたものだから。
つい嬉しくなって、夏目さんにもっと詳しく訊き返したい衝動にかられたけれど、それは言うべきじゃないと、私はぐっと言葉を飲み込んだのだった。
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