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それからは、二ヶ月後に生まれてくるこの子の名前のことや、世間話へと話題が移り変わっていって。
最終的に、また隼さんの話題へと戻っていた。
昨年の例の一件以来、隼さんのことを色眼鏡で見ているらしい要さんが隼さんの動向をそれとなく探るように夏目さんに指示しているのを、私が、
「あの時は確かに、隼さんもやり過ぎだったと思いますけど、隼さんなりに、『YAMATO』を守ろうと思ってのことだったじゃないですか。信じてあげましょうよ?」
そう訴えるも。
「いくらそうだったからって、俺と美菜のことを引き離そうとしたのは紛れもない事実なんだ。そう簡単に信じられる訳がないだろう? それに、そういうことをする人間は、いつかまた同じことを繰り返さないとも限らないからな」
相変わらず頑なな要さんの言葉に、私がシュンと黙り込むと。
「……あ、いや、美菜、ただ探って様子を見るだけだ。心配なのは分かるが、そんな泣きそうな顔はしないでくれないか」
ハッとなっていつもの優しい表情になった要さんが優しく宥めようとしてくれるけれど。
「なら、隼さんのこと信じてあげてくれますか?」
望みをかけて放った言葉には、
「ただ探るだけだ。美菜が案じる必要はない。美菜は自分のことだけ考えていてくればそれでいい」
優しい声色ではあったものの、やっぱり頑ななものが返ってくるだけで、私の望みが届くことはなかった。
その後ほどなくして、夏目さんが返ってからも、私は隼さんと高梨さんのことばかり考えてしまっていて。
特に、色々お世話になっていた高梨さんのことが気にかかっていた。
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