14055人が本棚に入れています
本棚に追加
なんとかしてその光景を振り払おうと一人必死になって悪戦苦闘していると、
「美菜? どうした? 気分でも悪いのか?」
そんな私の事情なんて知る由もない副社長が、なんだかとっても心配そうに声を掛けてきて。
手も自然にさりげなく、こちらへ伸ばしてきたかと思えば、隣の私の身体を自分の胸の方へと引き寄せてくれちゃったもんだから。
突然のことに、心臓だって驚いちゃって、ドックンドックン、鳴っちゃってるし。
これでもかってくらいにボンって全身真っ赤っかになっちゃった私は、もはや発火寸前だ。
なんとかして、この状況から一秒でも早く逃げ出さないと、燃え尽きて灰になってしまいそうで……。
私は、副社長と夏目さんになんとか声を振り絞り、
「だ、だだだだ大丈夫です、はいっ。ちょっと、車に酔いそうなだけですから」
「それならいいが」
「夏目さんっ! もうこの辺で降ろしてもらってもいいですか?」
「あぁ、オーケー。いいよな? 要?」
「あぁ、降ろしてやれ。
……まぁ、それも今日だけだ」
副社長が最後の方で、ボソボソと零した声が私には良く聞こえなくて、気にはなりながらも……。
会社まで歩く時間のこともあるし、会社の人に見られても困ると思い、素早く車から降りて会社へと向かったのだった。
そもそも、一刻も早くこの場から逃れたかった私には、そんなことをイチイチ気にするような余裕なんてものはなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!