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一体、これからどうなってしまうのだろうかと、途方にくれてた私は、ここへ来てやっと胸を撫で下ろすことができて。
「突然で驚いたでしょう?」
「……はい」
「フフッ……そうよねぇ? 実は、来月寿退社する予定の子が一人いたんだけど、体調不良で妊娠してることが分かっちゃって、早まってしまったの。
でも、ウチってだいたいは専門職で入社することが多いから、来てもらえそうな人がなかなかいなくって……。そこで今回、新入社員のうち、一般職で入った綾瀬さんに白羽の矢が当たっちゃったって訳なのよ。
急に、こんなことになっちゃって、申し訳ないわぁ。本当にごめんなさいね。
綾瀬さんには、研修も兼ねて、副社長の秘書である夏目くんのサポートをしてもらおうと思ってるんだけど……。
……あんまり大きな声じゃ言えないんだけど、ここだけの話。夏目くん、ちょっと見た目が怖いらしくて。
目で殺されそーとか言って、怖がっちゃう女の子もいるみたいだし。色々、あらぬ噂まで出回っちゃってたり、女嫌いで有名なんだけど。大丈夫。ちょっと個性が強いだけで、そこまで怖くないし、慣れちゃえば平気だから。
まぁ、最初は慣れないことばかりで大変でしょうけど、私もフォローするからよろしくね?」
「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
「今ちょっと席はずしてるようだけど、すぐ戻ってくると思うから……。分からないことは夏目くんに聞いてくれればいいから」
「……はい」
私の気持ちを汲んで、とってもすまなさそうに、綺麗に整えられた女優さんみたいな眉を八の字に下げながら、同じく目尻も下げて。
そうかと思えば、話題によっては、明るい口調で、茶目っ気たっぷりに、面白おかしく、そんな風に気遣ってくださったお陰で、憂鬱だった心まで軽くなってきた気がしてくる。
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