それぞれの思惑~前編~

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夏目さんの、あまりの言われようにはちょっとびっくりしちゃったけれど。 それだけ、すかしたインテリ銀縁メガネの効果は絶大のようだ。 ふと、夏目さんに、初めてお目にかかった時のことを思い出してしまい。 危うく吹き出してしまいそうになったことは、夏目さんには内緒にしておくとして。 まぁ、なにより、傍若無人な副社長が強引に決めちゃったんじゃないと分かったことが、何よりも嬉しかった。 先週末の、あのネックレスの件もあったから、私はちょっと被害妄想気味になっていたのかもしれない。 いくらあの傍若無人な副社長とはいえ、仕事のことまで好き勝手なことは言わないだろうし、ましてや職権濫用なんてしないだろう。 まぁ、そんなことより、一方の、秘書室にいらっしゃる他の先輩方はというと……。 会長、社長、副社長、専務それぞれに一名ずつ、その他の役職の方に関しては五名でまとめて兼務しているらしく、合わせて十名の秘書の方がいらっしゃるようで。 と言っても、社長と専務は先月からずっと、海外から輸入している時計やら宝飾品などなど、工場の視察やら接待やらで出張中らしく、それに同行している二人は不在なんだそうだ。 そのため、副社長は、先月から超が付くほどの激務をこなしてらっしゃるらしい。 きっと、先週末の一件も、それが原因で、イライラを爆発させてしまったんだろう。 ここでようやく合点がいった私は、副社長へあらぬ疑いを抱いてしまってたことを、心の中で詫びたのだった。
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