それぞれの思惑~前編~

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話は戻って……。 流石は秘書の綺麗なお姉様方っていう感じで、皆さんとにかくモデルさんみたいにスタイルも抜群だし。 服装にしたって、上品だし華やかで見惚れちゃうくらいで、本当に綺麗な方々ばかりなんだけれど……。 なんだか、ちょっと冷たいというか、素っ気ない感じがして。 皆さんどの方も本当にお綺麗だから、余計そう感じてしまうだけかもしれないけど、私が歓迎されていないっていうことだけは、なんとなく分かった。 なんとはなく、いたたまれない気持ちになりながらも。 与えられた夏目さんの隣のデスクに私物などを仕舞っている所へ、やっと夏目さんが自分のデスクへと戻って来て。 すかしたインテリ銀縁メガネ仕様の夏目さんが、 「あぁ、君が、綾瀬さん? 副社長の秘書の夏目です。どうぞ、よろしく」 なんて、初対面の時のような、クールにすました表情を決め込んで、素っ気なく言ってきて。 ちょっと(かしこ)まった様子で、私に頭を下げてくるもんだから、思わず、プッと吹き出しそうになっちゃって……。 「……はい。綾瀬美菜です。こちらこそ、よろしくお願いします」 でも、それをなんとか堪えて、私も慌てて立ち上がってお辞儀しながら挨拶を返せば、私だけに聞こえるように、「こら、笑うな」そう言って、優しく微笑んでくれたから……。 夏目さんが一緒だったら、なんとかなるかなぁなんて、単純な私は、この時、呑気にそう思っていた。 これから、どんなことが待ち受けているかなんて、思いもしなかったのだ。
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