揺らめく心と核心~前編~

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夏目さんは要さんのキメ台詞を口にした直後。 壁に追い詰めている隼さんの胸倉を締め上げるようにしてギリギリと持ち上げ、身体の横で握りしめたままだった握り拳を今まさに振り上げようとしている。 確かに、隼さんは私のことを力ずくでどうこうしようとしていた。 けれど、なんだろう。釈然としないのは……。 あの時、本当にどうこうしようとしていたのなら、いくら調子が悪くなったからといって、自分の不利な立場にも関わらず、救急車を呼ぼうとしたり、要さんに連絡しようとしたり、夏目さんを呼んだりするだろうか? 西園寺静香さんに女性関係で弱みを握られていたらしい隼さん。 さっきも、静香さんからの着信の後で、 『ご安心ください。静香さんのことでしたら、兄さんのお陰でたった今解決いたしましたから。美菜さんはご自分のお身体のことだけをお考え下さい』 そう言って声を掛けてくれた隼さん。 話の途中でも、 『もとより僕は、『YAMATO』のことを一番に考えてのことでしたので』とも、言っていたし。 少々やり方は間違ってしまったかもしれないけど、隼さんなりに、何らかの事情があったのかもしれない。 ――ううん。要さんの弟である隼さんのことだから、そうであってほしい、という願いのようなものかもしれないけれど……。 ――とにかく、夏目さんを速く止めなくちゃ。 「夏目さん、ダメー!やめてーー!!」 私はただその一心で、吐き気も忘れて声を張り上げていた。
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