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1
同窓会には二つの面がある。
一つは、目に見えるもの。笑い声を上げ、なつかしいな、お前変わってないなーと昔の人間関係をそのまま再現しようとする者たち。
もう一つは、目に見えない新たなものだ。
そう、大人になった今ではどんな職に就いているか。年収はいくらだ。彼女はいるか、結婚しているか、子供は何人、休日はどんなライフを過ごす、というものだ。
子供の頃は価値判断が単純でスポーツができる子はちやほやされるが、大人になればものを言うのはお金であり、社会的地位である。
子供の頃は地味だった者も大人になって弁護士や医者など社会的地位の高い職に就けば、自然と身なりだけじゃなく振る舞いや言動も教養のあるというか、一つ以上段差の違う場所にいると気づかされる。
彼女は、昔は高嶺の花といわれていた。
しかし同窓会では、髪を金髪に染めていた。ハリウッド俳優のようなきれいなものではなく、安物のブリーチで変色した金。彼女をA子さんと呼ぼう。
その同窓会は田舎のとある町で開かれたもので、実家で家業を継いだり、すぐ近くで家庭を持つ者が多い中、数名は単身で上京していた。A子もその一人だった。
すらりとした鼻梁に、透き通る白い肌。長い黒髪は清涼感あふれ、地元では神童として扱われていた。
上京したのも地元に彼女にふさわしい学校がないからで、やがては弁護士や外資系の一流企業に勤めるなど、輝かしい未来を誰もが信じて疑わなかった。
だが、数年ぶりに見たA子は一同から言葉を喪失させた。
彼女はあっけらかんと「久しぶり」と言ったのだが、最初はみんな誰だこのヤンキーといぶかしんでいたのだが、話している内にA子のことを思い出し、そして本人だと知らされる。そのときの衝撃はすさまじいもので、狭い地元では老人から子供まで知っていたらしく、居酒屋の店員がショックでビール瓶を落とす始末。
2
あまりよろしくないが、もちろん、彼女がなぜこうなったかについてはたくさん噂が飛び交った。
ダメな男にだまされた。
変な商売に引っかかった。
誰もが予想つくような噂から、または奇想天外な噂まで彼女はA子の偽物で、実は本物は殺されたなどだ。
もちろん、突拍子のない噂は誰も信じず、正解率が高いのはダメな男や変な商売などと予想していた。
わたしは、この話をA子さんの友人であったBちゃんから聞いた。
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